AI時代の働き方読了 約4分

「AIがあるならプログラミングスクールは不要」は、半分だけ正しい

生成AIがコードを書けるようになって、学習にお金をかける意味が薄れたという意見が増えました。AIが肩代わりした学習と、肩代わりしていない学習を分け、「不要」が正しいケースと外れるケースをはっきり書きました。

「AIがあるならプログラミングスクールは不要」は、半分だけ正しい
目次

「AIがコードを書くのに、わざわざスクールに行く意味があるのか」という疑問は、もっともだと思います。実際、数年前のスクールが売っていたものの一部は、AIに置き換わりました。

ただ、この意見は半分だけ正しいです。置き換わった部分と、まったく置き換わっていない部分がはっきり分かれていて、そこを混ぜると判断を間違えます。スクールを運営している立場ですが、置き換わった部分については置き換わったと書きます。

AIが肩代わりしたもの、していないもの

学習の中身を2つに分けると、線はかなりきれいに引けます。

AIで要らなくなった

調べれば答えが1つに決まるもの

  • 文法を覚えるための反復
  • エラーメッセージの意味を探す時間
  • ライブラリの使い方を調べる時間
  • 定型的な処理を手で書く作業
置き換わっていない

状況によって答えが変わるもの

  • 何を作るべきかを決める
  • 出てきたコードが妥当か判定する
  • 複数の案から1つを選ぶ理由
  • 半年後に壊れるかどうかの見当

左側は、かつてスクールのカリキュラムの前半を占めていた部分です。ここに時間と金を払う理由は、ほぼなくなりました。右側は、AIを使うほど必要になります。AIは案を出せますが、採用するかどうかを決めるのは使う側で、決める基準はAIからは出てきません。

「不要」が正しいケース

次のどれかを買うつもりだったなら、不要だと思います。

  • 言語の文法を順番に教わるカリキュラム
  • 用意された課題を写して動かす進め方
  • 「調べ方が分からない」を解決するためのメンター
  • 動くところまで連れていってくれる伴走

このうち上の2つは、AI以前からすでに独学のほうが速かった領域です。残り2つも、質問の投げ先がAIになったことで価値が下がりました。詰まったときに一緒に考えてくれる相手として、AIは十分に機能します。

ここが分かっていないスクールのカリキュラムは、いま受けるとかなり割に合いません。そもそも「エンジニアスクール」の検索結果には目的の違う2種類が混ざっているので、「エンジニアスクール」の検索結果には2種類が混ざっているを先に読んだほうが早いかもしれません。

「不要」が外れるケース

一方で、次の状態はAIでは解けません。

詰まりAIに聞くとどうなるか
出てきたコードが妥当か分からない「問題ありません」と返ってくる。判定にならない
構成をどう選ぶか決められないどの案を聞いても肯定される
作るものが決まらない提案は出るが、自分の課題かどうかは判断できない
自分のコードの癖に気づけない指摘する前提がない

共通しているのは、AIが自分の出力を否定しにくいことです。聞き方を変えれば批判もさせられますが、それは「否定してほしい」と頼んでいるだけで、外からの判定ではありません。基準を持っていない状態で使うと、肯定だけが返ってきます。

この構造がスキルの伸びに効いてくる話はAIで実装は速くなったのに、スキルが伸びている気がしないに書きました。

AI前提で、学習の設計は3つ変わった

「不要か必要か」の二択ではなく、必要なものの中身が入れ替わりました。

変わった点以前いま
時間の使い先書けるようになるまで判定できるようになるまで
題材の大きさ小さく作って完成させる大きく作って運用に当てる
詰まりの種類動かないことに詰まる動いたあとに迷う

2つ目は見落とされやすい変化です。AIで実装が速くなったぶん、同じ時間で前より大きいものを作れます。小さい題材だと、判断が必要な場面に行き着く前に完成してしまいます。学習の題材は、以前より大きく取るほうが合っています。

同じ道具が整然と並んだ机と、その横に置かれた一枚の白紙

自分の場合に必要かどうかを判定する

次の5つで、だいたい決まります。

AI時代に学習にお金をかけるかの判断

  1. 01詰まっているのは「動かない」か、それとも「これでいいのか分からない」か(後者ならAIでは解けない)
  2. 02自分のコードに指摘が返ってくる環境があるか(ないなら外の基準が要る)
  3. 03作る題材を自分で決められるか(決められるなら独学で進める余地が大きい)
  4. 04買おうとしているのが文法のカリキュラムではないか(それなら不要)
  5. 05AIに「これで大丈夫か」と聞いて安心した経験が何度もあるか(判定が外注になっているサイン)

1つ目で「動かない」側なら、いまはAIと公式ドキュメントで十分です。5つ目に心当たりがあるなら、判定の基準を外に置いたままになっています。

正直なところ:未経験の入口は狭くなった

ここは避けずに書きます。AIが書けるようになったことで、未経験が実務に入る入口は狭くなりました。以前なら新人に振られていた定型的な実装が、AIで埋まるからです。「未経験からスクールで3ヶ月、転職保証つき」というモデルは、以前より通りにくくなっています。

逆に、すでに実務経験がある人の価値は下がっていません。判定する側に必要なのは、過去に自分で決めて失敗した経験で、これはAIから出てきません。経験者にとってのAIは、脅威より先に、学習の効率を上げる道具として働きます。

AIによって何が残るのかという全体像はAI時代に生き残るエンジニアは何が違うのかに書いています。

まとめ

「AIがあるから不要」の中身判定
文法を教わる必要がなくなった正しい。そこに払う理由はない
調べ方を教わる必要がなくなったおおむね正しい
判断を身につける必要がなくなった間違い。必要性は上がった
外から判定してもらう必要がなくなった間違い。AIは否定を返さない

「AIがあるならスクールは不要」は、文法と調べ方を売っているスクールについては正しく、判定を売っているスクールについては外れます。買おうとしているものがどちらなのかを先に見れば、迷う余地はほとんどありません。

JISOUは実務経験者向けのオンラインスクールで、受講生は自分のアイデアでサービスを作り、提出したコードに現役エンジニアのレビューが入ります。AIを使うことは止めていません。見ているのは、出てきたコードを自分の判断として説明できるかどうかです。

JISOU編集部

JISOUは現役エンジニアのスキルアップを専門とするプログラミングスクールです。記事は実際に現場で開発しているメンバーが執筆・監修しています。